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「これは?」
「ハーブティー、最近ハマってるんだよね。俺様色々大変だから。」
トホホと笑う猿飛。
思わずつられて笑ってしまう。
「で、素敵なことだったのか?」
「え?」
「さっきの話の流れでは、我と出会えたことが素敵なことのように聞こえるぞ。」
我の言葉に一瞬驚く素振りを見せる猿飛。しかしすぐに少し照れ臭そうに鼻を擦った。
「……俺様さ、ずっとこの瞬間が欲しかった。初めて出会った時から、ずっと…。」
まるで出会ったのがとても昔のような口振り。
それに気づいていないのか、猿飛はとても懐かしむように優しい顔をする。
……まさか、猿飛と昔出会ったことがあるのか?
しかしそれなら猿飛も人間違いをせずに“我”に声をかけるはず…
「猿飛、我等は──」
猿飛に尋ねようとした時だった。
「猿飛、どけぇぇぇぇえ!!」
銀髪の男が木刀片手に走ってくる。そして桜の花弁が一際舞ったと思った瞬間──
「毛利ぃぃい死ねぇぇぇえっ!!」
「毛利サン!!危ないっ!!」
猿飛の必死な表情と伸ばされる手。
瞳孔が開き、憎悪で染められた銀髪の男の目。
そのどちらもまるで他人事のように見ている自分がいる。しかしどちらも一瞬で、我は心のどこかで覚悟を決めた。
…………何故だ?
痛みがこない。
我は恐る恐る目を開ける。
「……っ!! 長曾我部、先生…」
驚きすぎて声が喉にひっかかる。
我目掛けて振り下ろされた木刀は、長曾我部先生の手によって止められていた。
「………怪我はねぇか、毛利。」
ただ一言、たった一言なのに、色んな感情が込められた声。
我は頷くと、銀髪の男へと視線を移した。
「……何故、貴様……家康を裏切るのか?」
「……裏切らねぇよ。ただこいつは、ここの生徒だ。教師が生徒守って何が悪い?」
長曾我部先生は淡々とした声で話す。その間、先生の握りしめた木刀がミシミシと軋む音がした。
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