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「家康、お前…」 不意に長曾我部先生の口が開く。まるで信じられないとでも言うように家康を見つめていた。 「人は変わる、その思いも生き方も…その者次第で。だからワシは信じてみようと思う。元親も…いや、もう信じているんじゃないか?」 どこか悲しげで、でも力強く話す家康を我はただ見つめることしか出来なかった。 我も家康のようになれば、沢山の笑顔に包まれて生きることが出来るのだろうか… 長曾我部先生は「そうか…」とだけ言うと、一歩下がる。それを合図に眼帯の男が近寄ってきた。 「Hey 家康。オレはお前の考え方は尊敬している、だがその男はhateだ。」 “大嫌い” 見ず知らずの男に言われたその言葉が胸に突き刺さる。 「そ、某はどうすればいいのか分かりませぬ。しかし…毛利殿の瞳は今とても優しい。」 紅い鉢巻きを巻いた男は、ゆっくりと我に近寄ってくる。 「佐助は某の幼なじみでござる。佐助が毛利殿と仲良くするのなら、某も仲良くしたいでござる。」 古風というのか変わった口調に思わず笑いそうになる。 そうか、この思いは伝わるんだ。その速さは人それぞれ、しかし必ず伝わる。 「ありがとう。我のことは元就で良い…名前は何と申すのだ?」 「あっ!!これは失礼を致した!!某、真田幸村と申す!!」 「幸村、か。良き名ぞ。」 「─っ!!」 幸村はまるで猫のように目を真ん丸くしたと思えば、次の瞬間茹で蛸のように真っ赤になった。 「どうした?」 「大将、毛利サンの笑顔に見惚れたんだよね?破廉恥ー♪」 猿飛が面白がるように言う。その言葉に幸村は耳まで真っ赤になった。 「さ、すけ!!某はただ…」 「はいはい。あ、ちなみにこの眼帯の男は伊達政宗。んでもってあの人が竜の右目…って分かんないか、片倉小十郎。その隣にいるのが前田慶次。」 猿飛の紹介に片倉と前田は気まずそうにしたが、ペコリと頭を下げてくれた。 「私は…石田三成だ。」 我の後ろで木刀を握る男が呟いた。どこか気まずそうにしているが、さっきの憎悪は見られない。 「石田というのか、よろしく頼む。」 我は石田の肩を軽く叩くとふんと顔を背けられたが、その耳はうっすらと赤かった。 「ちっ、オレだけかよ。」 鋭い眼光をもつ伊達に睨まれると思わず緊張してしまう。 だがここで一歩踏み出さなくては… 我はもう1度腹をくくった。
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