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「どうしてそこまで嫌う?」
「知りたいか?」
挑発的なその目に、ふと既視感を感じた。
もしや前にも会ったことがあるのか?
その時に我が何かしたとか...いや、思い出せない。
『オレは忘れないぜ、あんたのことは。』
―――――――え...
頭の中に響く男の声。
ドクンと高鳴る鼓動、しかし全身の血の気が引いていく感覚。
視界は紅いもやに包まれ、足元から真っ暗な闇に落ちるような気がした。
『あんたが地獄へ堕ちるのを見届けてやるよ。――――の苦しみを背負って、地獄へ堕ちな。』
やめろ、やめてくれ...
我は戻りたくない――――
...何 に 戻 る ん だ ?
「...ちゃん、就ちゃん!大丈夫?!」
気がつけば慌てた様子の猿飛が支えてくれていた。
「大丈夫、だ。」
心配そうな猿飛に、精一杯の笑顔を向ける。ちゃんと笑えているだろうか、転入早々心配をかけたくない。
「...あんた、まさか過去を消したいのか?」
さっき聞こえた声によく似た伊達の声。またあの感覚に陥るかと思ったが、大丈夫そうだ。
しかし伊達の言いたいことが分からず、返事をすることができない。ただ...
「伊達が何のことを言ってるのかは分からぬ。ただ我は、皆と仲良くなりたいと思う。一緒に昼飯を食ったり、しょうもない話をしたり...そんなことを当たり前に出来る友達になりたいだけだ。」
まるでそう言うことが決まっていたかのように紡がれる言葉。
伊達は一つ大きな溜め息をつくと、今度はどこか優しい目をしていた。
「オレの負けだ。あんたが新しい道を歩みたいのなら歩めばいい。」
それはつまり?
「友と言うことだ!」
家康や猿飛が嬉しそうに笑う。
それを見て伊達は少し照れたように目を背ける。
先程までの緊張感はここにはなかった。
「さぁ!お昼にしようっ!」
とたんに皆が其々己の弁当を広げ始めた。どうやら話は終わったらしい、こんなにもあっさり解決していいのか?
「ほら、食うぞ。」
桜の木の根に座る長宗我部先生が手招きしていた。
一人状況についていけていない我は、とりあえず先生の隣に腰かける。
「...本当に覚えてないんだな」
「え?何か言いました?」
「いや、何でもない。ほら、食うぞ!」
切なそうな先生の顔に、何故だか胸がきゅっと締め付けられた。
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