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(長宗我部視点) あの後...毛利元就を倒した後、毛利の部下が俺の元を訪れた。 そして毛利の過去を聞いた。 人に裏切られ孤独を抱えていた幼少期、自分も駒の一つと考え民の生活を守っていたこと... そして本当は、人の愛に憧れていたこと。 部下が話す毛利は俺の知る毛利とは別人で、聞いている間開いた口が塞がらなかった。 『あ…りが…と…』 死の間際、毛利が呟いた言葉。 初めて見る優しい顔と声に戸惑ったが、振り上げた碇を止めることはしなかった。毛利のしてきたことは許せることじゃなかったからだ。 しかしあの時見せた顔が本当のあんただったのか? どうして最期に本当の顔を見せた? 自分を殺す相手にどうして礼を言ったんだ? 「長宗我部殿!」 毛利の部下の声で俺の意識は現実へと返る。きっと今の俺は情けない顔をしているんだろう、部下達が悲しげに俺を見つめていた。 俺がこんな顔をするのは間違えてる、あの男は多くの罪のない人間を殺した。だから俺が... 「自分の主を殺した俺が憎くはないのか?」 話を変えようと、気になっていたことを尋ねてみた。 「...我が主は、喜んでいるのではないかと思っています。もう自分の心を殺し、沢山の者を殺めなくてすむのですから。」 毛利の部下は優しい笑顔を浮かべた。 皆氷のような顔をしてると思ってたが、その下には主への忠義があったのか.. そう思うと胸の奥が何かに掻き荒らされるように苦しくなった。 「すまないが、一人になりたい。」 そう言って俺は逃げるように部屋を出た。あんなに慕われてたなんて俺は知らない。 いや、俺は『毛利元就』の何を知ってる? 「ここは...」 気がつけば裏庭に来ていた。 ひっそりと、しかし見事に桜が咲き誇る。ゆっくりと歩みよると俺を労るかのように花が舞い上がった。 『...美しいな。』 声がした方を見ればいるはずのない毛利がいた。深緑の着物が色白の肌によく映えている。 「毛利...っ!」 どうしてここにいる?!死んだはずじゃ... 『長宗我部...』 悲しげな表情を浮かべる毛利。 『綺麗だな、長宗我部。我はこの桜を忘れない、絶対に。』 これは...見覚えがある。俺はゆっくりと瞼を閉じた。
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