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我は負けた……
それは我が体から止めどなく流れる血がそう言っている。
──あんたも終わりだな!!
ああ、貴様のいうとおり我はここで死ぬ。だがこれで我が役目から解放されるのだ、悔いはない。
だが、貴様にこの想いを伝えられなかったことは悔いとして残るであろう。
“我は貴様が好きだ”
ただそれだけの言葉が伝えられないとは…。
敵同士だから?
それもある。それに我に誰かを好きになる心がある等、我すら知らなかった。
それと“好き”が“愛しい”になることも初めて知ったな。……その時はかなり泣いたが…
ふとひやりとしたものが頬に触れるのを感じ、重い瞼を開く。
そこには悲しいほど愛しい銀髪の鬼がいた。どうやら我の頬に当てられているのは奴の碇、我が首を取るためか。
「あんたももう終わりだ。」
冷たい長曾我部の声に、胸が締め付けられる。だがそれでいい、こやつは笑顔が似合うから……
我を嫌ったままでいろ。
「我が首を…早く取れ。」
「ふん、言われなくとも取ってやるぜ。何か最後に言い残すことはあるか?」
言い残すこと、か……
悪言等言おうと思えばいくらでも言えるが……
今は、今だけは己の気持ちに素直になってみようか。どうせ奴に知られず散るこの想いならば……
「ちょ…そか、べ…」
「元親!!」
ふと聞こえたのは、忘れもしない徳川家康の声。長曾我部の大切な…好きな男…
そうだ、長曾我部に愛される奴が憎くて、今回の策を実行した。全ての悪は徳川にあると。
…だが長曾我部は最後まであの男を信じた。真っ直ぐな瞳で。
「家康、来たのか!!」
呼ぶでない…
そんな優しい声で他の奴を呼ぶでないわ!!
……だが我にはそれを言うだけの力と、勇気を持ってはいない。
あの“毛利元就”がこれほど弱い人間だったとは…笑える話ぞ…
「ちょう…そ、かべ…!!」
だが我は素直になると決めたのだ。
言いたいことは沢山あるし、ちゃんとこの男に伝わるか分からぬ。
それでも伝えたい……
我に愛しい気持ちを教えてくれて、役目から解放してくれて───
「あ…りが…と…」
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