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―――――― 毛利の土産の酒はどれもうまかった。こんなにうまい酒があったなんて。 礼を言おうと毛利を見れば、優しい瞳で桜を見つめる綺麗な横顔。ふわりと吹いた風が毛利の柔らかそうな髪を揺らし、開きかけた口はそのままに目を逸らすことが出来なくなる。 「どうかしたのか?」 「...っ!いや!なんでもない!」 突然交わった視線にこれ以上ないほど胸が高鳴る。 ったく男に見惚れるなんてどうかしている。でも初めてあったときも見惚れたっけか。こんな美しい人間がいるんだなって。 急に思い出した昔の思い出に恥ずかしくなり、必死に話題を変えた。 「なあ、毛利?次生まれ変わったら何になりたい?」 「...酔ったか?そんな下らないこと考えたこともないわ。」 「俺は考えるぞ?次生まれるときは戦なんかない時代がいいなーとか、女でもいいなとか。」 突然の話に呆れたような冷たい目で返す毛利。でも何故か嫌な感じはしなかった。 むしろ毛利と話してると体の奥底に溜まった毒がゆっくり溶けていくようだった。 「我は...次に生を受けたら」 「...スー...」 「おい。...寝たのか、この阿呆は。」 ―――――ふわり 「風邪を引くぞ。」 次の日の朝、気づくと毛利はいなかった。 代わりに毛利の羽織が俺の体にはかけられていた。 「起こしてくれりゃ良かったのによ...ん?」 瓶の下に折り畳まれた文が一通。 "楽しかった" 綺麗な字で書かれた一言に、思わず頬が緩む。 また誘おう、今度は毛利の好みも聞いて... ――――― ―――――――― 「..また誘おうと思ってたのに。どうして、俺は...」 そうだ、毛利は本当は優しい人間だった。 なのに一時の感情で俺はあいつを... 『あんたももう終わりだ。』 目を閉じればあの瞬間の感触が蘇ってくる。振り上げた碇の重さ、飛び散る血潮....そして 【あ...りが...と】 ―ポタリ... 「毛利、すまねぇ...俺は、お前を...」 ―ポタポタ... 溢れだした涙が頬を濡らす。 なあ、毛利。 次生まれ変わったら俺はあんたを守るよ。 そして絶対に忘れない、この罪も。 でも黙ってた罰として一発は必ず殴るから。 俺はこの日そう固く誓った。
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