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「元就、もう学校に行くの?まだ早いんじゃない?」
「編入初日から遅刻はしたくないからな。我はもう行く。」
台所から心配そうにする母に、我は優しく笑いかければ安心したように笑い返してくれる。
我、毛利元就は、今日からこの町の高校へ通う。編入なため、2年からのスタートになるが…
楽しくなればそれでよい。
「行ってくる。まだ慣れぬため、帰りは遅くなるやもしれぬ。」
「笑顔で人には接するのよ?そうしたら友達100人作れるから!!」
「友は100人もいら─」
「もう!!そんなこと言ったら母さん泣いちゃうから!!…ふふ、友達出来たら遊びに連れてきなさいね?」
朝からテンションの高い母に、背を押されながら我は家を出た。
ったく、母の勢いにはいつまでたっても敵わないな。
ゆっくりと春の香りに包まれる道を歩きながら、どんな友が出来るか思いを馳せる。
前の学校では食い意地の張った男ばかり親しくなった。まぁそれはそれで面白かったから、今回もそんな友が出来るといいな。
──
────
高校は満開の桜に包まれていた。校門を潜れば桜の匂いが我を包み込む。
「やはり良いところだ。ここにして正解だったな。」
己の選択に満足しながら、辺りを見渡す。すると桜の木の枝から何かがぶら下がっているのが目に入った。
…………あれは人か?
じーっと此方を見つめている男は、まるで警戒した猫のようだった。
「……貴様もここの生徒か?我は今日からこの学校に通うのだが…」
「……………」
我が話しかけたことにより、眉に深い皺を寄せたその男は話す気配がない。
“笑顔で接するのよ!!”
ふと、家を出る時の母の言葉が我の脳内にこだました。
……頑張ってみるか。
「我はまだ慣れぬ故、職員室まで案内してもらいたいのだが……構わぬか?」
にこりと笑いかけてみれば、男は面白いほど目を見開き枝からどさりと落ちた。
「大丈夫か?」
「あいたたた…、あんた俺様見て何も思わないわけ?」
……この男は何が言いたいのだろうか。
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