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改めて希の下半身を見れば、それは魚どころか蛇の尾のような姿をしています。そして尾の側面に等間隔を空けてヒラヒラの羽のようなものが6枚、不必要に着いてやがったのです。
そんな体をした魚は見たことも聞いた事も無い。目の前の奴が人魚だと言い張るのなら、何かの魚ではあるのだろうが……
何も思い当たらない狐男は素直に希からの解答を待っていた。すると、本当にあっさりと正体は明かされる。
「スカイフィッシュという生物はご存知っすよね」
「んだよそれは?」
「はは~ん、兄さん山の出だから知らないんすね。ま、それも含め説明してやるっす。
スカイフィッシュつーのはUMAっつう、あれUFOの生物版みたいだと思うっす。んでコイツは空飛ぶ魚とか言われてる未確認生物って訳で、私はその人魚なんすにょ~ん。にょにょり~ん」
最後に意味不明な言葉を叫んだりしたのだけれど、希はキチンと自分の正体を明かしたのである。
「空飛ぶ魚の人魚だと、しかも未確認生物とかなんつーのもオマケつきって」
受け入れがたい事実であった。だってそうですね、魚は水の中を生息するのが前提と言いますか常識と言いますか、それが陸に上がるだけではなく空まで飛んで居るんです。
そんなのありかよと文句を言いたくなりましたが、狐男はここでまた1つ気付きました。
「オイ、そのスカイなんたらが未確認生物って言うんなら何故お前は幻想種化してる? 俺達幻想種ってのは確定した生物限定のハズだろ、居るや否か分からない域を出ないものが力を持ってたまるかよ」
「ふぅふふん。その問題を解決するのがうちの大将が生成したこの――――苦くて濃くてドロドロしたなんちゃら液なのねん。
スカイフッシュは確かに未確認であり、通説によればハエの残像現象の見間違いとかが有力なんすけどね。でも、そのまま一生命体として固定化された世界があってもおかしくないって思いやせんっす?」
「どういう事だ?」
「つまるんところ、スカイフッシュが存在確定した世界の私を今の私に貼り付けた、とかとか。細かい説明とかメンドゥで聞き流したんで知らんすが、ともかく私はスカイフッシュの人魚でありんすよ」
原理はどうだか知らねーがシンプルにまとめっと、どうやらどうにかして未確認生物の幻想種化に成功させたって事か。と頭の中で整理した狐男。
それだけなら、なんだ恐るるに足りぬと同時に思うのです。
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