非日常、『私も抱いて欲しいと要求します。無論性的な意味で』

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「くく、何だ種が分かれば怖くも何と――――ぶっ!」 無い。とでも言いたげだったようですが、言い終わる前に顔面に衝撃が走りました。 後ろ向きに吹っ飛ばされる狐男は、地面を転がりながらどうにか途中で体勢を立て直したが、上手く足が地面の上に立たないでいた。 ツーと鼻から出る血を拭い、先程まで自分が居た場所にいつの間にか出現していた敵を見た。すれば、 「忠告しとくの忘れてたっす。説明するとは言っても勝負は最中っしたし、後あんまり私の事を舐めないで欲しいんすよ。 たかだか人間の上に狐の幻想種を乗っけた野郎が、人魚とスカイフッシュという幻想種を重ね掛けした私に勝てるとーでも? 端っから格が違うんすのに」 「ほざけぇッ!!」 人魚如きに罵倒される筋合いは無いだの、ラッキーパンチ食らわしたからって調子乗んじゃねぇぞ。と、怒り任せに巨大な狐火を放ちました。 ところでこの希という少女、魚が水中を高速で泳ぐようにこの娘は同等の速度で空を舞います。正格には、スカイフッシュの特性で浮遊し、尾ヒレを使って自由自在に飛び泳ぐのです。 ビル及び看板や電線と言った障害物が多いものの、幻想種化した希にとってここは庭と同じです。狐火を放たれようともそれ以上速く飛翔し、空から後ろへ回ればハイ背後を取りました。 狐男が気配に気付いて振り返るのを待ちません。そのまま背中に向かって「ちぇすとぉぉぉーーんッ!!」と叫びながら右ストレートをかまします。 余談ですが、人魚(幻想種)×スカイフッシュ(幻想種)の力は、妖狐(幻想種)-人間(俗世)持ちの相手と比べたら雲泥なのです。中古車とポルシェのように、もやしとフカヒレのようにランクは段違いの差を生んでまして、 「ごはっ――――――」 殴られた狐男は再び地面を何メートルも叩きつけられながら転がります。鈍い音を響かせながら、口から血を吐かせながら。 狐男はこの一撃で悟りました。相手にしてはならない敵だと、逃げるしか生きる道は無いのだと。 口にある血を飲み下し、追撃の為かゆっくりと近付いてくる希に対して、 「狐火――――火囲い!」 ありったけの火で炎上網を希と自分の間に作り出し、狐男は一目散にこの場から撤退した。 その逃げていく事を目を閉じながら確認した希は、ほぅと一息吐き、 「作戦通り追い込んでやったっす」 と呟くのでした。
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