3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふざけやがって、あのクソ女(アマ)がぁ……」
一目散に逃げていた足でしたが、背中の一撃が文字通り足を引っ張っており上手く走れませんでした。それでも痛みを我慢して、どうにか小狭い路地へ隠れ込みました。
何故、狐男が小狭い路地をわざわざ逃げる先に選んだのかと言うと、スカイフッシュの人魚が空を飛べるのならば建物の屋上及び大きな道路は見つかりやすいと踏んだからです。
上空から見られたらアウトですし、何より先程のように飛べられたら反撃も出来ようになかったのです。今は身を隠して一先ず落ち着くべきだと狐男は判断しました。
そうして小狭い路地を進んで行くと、犬種よりは劣るものの人間より優れた嗅覚が異常を知らせました。
「やたらと鉄分臭いっつーか、こりゃ」
間違い無く血の匂いです。
辺りに漂うこの匂いは昔から染み付いたものではなく、今まさに散らしたような新鮮な匂いがしています。女の腹を食らった時まさしく香るそれと酷似してました。
出来立ての死体でも転がってんのかと狐男が呑気に思いながら進んで行くと、目の前にまた少女が1人来訪者の方を向いて居やがりました。
高校生か大学生くらいの金髪美少女で体は巨乳ともなれば、男なら誰しもかぶりつきたくなるような特上の女です。
その女が狐男に向かって口を開きます。
「さすがは手筈通りじゃのう。こうも狐を罠にか――――ぐ、ぎゃ?」
「悪ぃ、こういうパターンは即殺しなきゃ生き残れない気がしてな」
女を見つけるや否や走り出し、なんか喋っていたのを全て無視した狐男は爪を心臓に突き刺しました。
即死。えぇ間違い無く、まさしく女は――――リリィは即死しました。
自分の元へ崩れ落ちるリリィの体から手を引き抜いて、ペロッと血を舐めながら死体に向かって、
「悪く思うなよ姉ちゃん。あぁ、こんな美人殺すなんて本当は勿体無くて仕方ねーんだが、どうせお前も俺等と同じ半端者なんだろう。
生き抜くためには非情にならねーと駄目なんで、恨むならテメェの弱さと油断した愚かさだな」
そう、狐男は敗者であるリリィに言い残してその横を通り過ぎようとしましたのですが、
ガッと、脚を何かに掴まれます。
「おやおや連れぬ事を言いおる。私(わらわ)はまだまだこうしてピンとしておるのだが」
胸を貫かれた死体から――――ではありません。声は明らかに狐男の影からでした。
最初のコメントを投稿しよう!