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「お前等の事だから勝手にどっか抜け出すんじゃないかと冷や冷やしてたんだが、どうやら全員居るようで良かった」
「大将何言ってるんすか、全員って芽生(めい)っちが欠けているっすよ。千三子ちゃんはともかく芽生っちは忘れてあげないで欲しいんす」
中羽が揃っている事に胸を撫で下ろしていた所に、それは違うよとばかりに希が言いました。そう、本来ならば7人目である空廻芽生(そらりめい)を入れてメンバーは勢揃いなのです。
そう言えば言ってなかったっけなと思いながら、中羽は希の突っ込みに返す。
「アイツは体のメンテナンス中だ。どうも節々がまだガタガタ言っているらしくてな、実家に帰って看てもらっているとか何とかって」
「あ~、なるほドゥー。通りで最近見かけてにょんかったんすね。この前の戦いは無茶しやがって状態だったすから、これを気に元気な体になって欲しいにょ」
疑問も解決したようでスッキリと納得した希。その後ろで、静かに怒っている者が1人。
「ねぇ希ちゃん、ちょっとだけ良いかな。さっきの発言よく聞こえなかったんだけど、私の事はなんて言ったの?」
「それは……はは、言葉のあやと言いますんか」
千三子のあまりの迫力にたじろぐ希。存在感が無い、地味、お前居たの? 気付かなかったわ等エトセトラ。そういう類の発言は千三子にとってNGワードである。
「あぁ、ちょっ、止め、お尻の穴だけぃは~」と千三子のお仕置きを食らって騒ぐ希は全員放っておきまして、今度は静流が中羽に口を開く。
「ねぇねぇダーリン、そろそろいい頃合いになると思うんだけど~、未言ちゃんの合図ってまだなの?」
あざと可愛いらしい上目遣いで聞いてくる静流に対して、ノーリアクションで「さぁな。こればっかりは俺にも分からん」と答えた中羽。
対象である狐男が街に来る事も、ましてやこの街への仕掛けも準備は終わっているハズなのですから、本当頃合いなのは確かなのです。
もしかしたら数分後に犯罪者撲滅の為の戦いが始まるかと思えば、今の内に渡しておくべきかと思った中羽は、
「んじゃ、いつものアレ配るとすっか。おーい千三子と希もこっちに来い」
いつの間にか屋上の端へと引っ張られてはアイアンクローの餌食になった希と、喰らわせていた千三子をこっちに呼び出し。
中羽は白衣のポケットから3つ、エメラルド色に輝く液体が入った注射器を取り出した。
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