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ピンポーンと音がなったのも束の間、扉はすぐに開かれた。
「なんだよ、昨日と中身変わってないじゃん」
部屋に入って五歩も歩けば辿り着く冷蔵庫を開きながら諏訪は言う。
「お前さぁ、俺がAV観ながらオナニーしてたらどうするわけ?」
「ははっ。やだ駿ちゃん、いつそんな大人な言葉を覚えたの?」
なにが楽しいんだか、おカマな口調でにやにやと笑いながらベッドに移る諏訪に呆れた顔を見せつける。すると今度は得意気に口角を上げた。
「なんだよ、いまさらぁ。いいじゃんか、な?」
そのベッドに横になりながら漫画を読んでいた俺にいつもの笑顔を見せる。俺はこの顔に弱い。
隣に住んでいるはずのこの男の名前は諏訪友則。俺と同じ大学二年だ。どうしてか、このアパートに住み始めた初日から割と仲が良い。というより最初から諏訪が馴れ馴れしく、そしてしつこく話しかけてくるもんだから必然的に仲良くなってしまったのだ。気付けばいつしか、こうやってチャイム一つ鳴らせば有無をいう前にズカズカと上がり込むようになった。そりゃあ呆れたくもなるだろう。けれど決して嫌な気はしなかった。むしろ、チャイムの音がなると弾むなにかが確かにあるくらいだ。
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