いち!

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俺と諏訪は同じ大学に通っている。学部も学科も違うために会うことはほとんどないはずだが、大学内でも度々諏訪がやって来るのでそうはいかないのだ。 もちろん嬉しくないことはない。しかしそのわずかでも確かな気持ちを自分の中に感じ取ると、なんとも言えない感情が湧く。そもそも俺は高校に上がるときに、ノンケにはもう恋をしないと決めたはずだった。おかげで高校生活自体は何の支障もなく平和に過ぎた。けれど今はどうだろうか。 「蕎麦あるんだけど一緒に食わないっすか?ほら、引っ越し祝い?」 多分、同じ日に引っ越してきてしまったのが全ての諏訪との始まりだった。一通りダンボール箱からすぐに必要な物だけを出して整理した所に諏訪が訪ねてきたのだ。人付き合いは苦手ではないが面倒臭い。それともともとの性格が相まって高校時代に友達と呼べる人間はいなかった。諏訪もきっと同じだろうと最初は思っていた。いずれわざわざ関わろうとはしなくなる。ただのクラスメイトみたいにただの隣人になるだろう、と。 「俺も蕎麦あるんでいいです」 いつだったか、諏訪が俺の部屋に居座ることが増える前に「なぜそんなに素っ気ない言い方をするのか」と聞かれたことがある。「そういう性格だから」が俺の答えだった。その時の諏訪は「ま、いっか」と一人だけ納得したように、けれどどこか不満そうに話を流した。いや、その頃だった気がする。諏訪が居座るようになったのは。
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