63人が本棚に入れています
本棚に追加
日を跨いで朝。諏訪は俺のベッドの上でぐっすり眠っている。本日のこいつは午後からの授業のため、恐らくしばらくはゴロゴロするのだろう、うちで。対して俺は朝一番の授業に続いてもう一コマという諏訪とは対称的な日程となっている。
諏訪は寝相が悪い。昨晩、冷房が直接当たって寒いと身体を覆ったはずのタオルケットが足元でぐしゃぐしゃになっている。そして暑がりでもあるので、寝る前にしっかりタイマー設定をしたはずの扇風機はくるくると諏訪を中心に羽根を回していた。少しは俺の電気代も考えてほしいものだ。しかしその程度の不満は諏訪の寝顔を見れば落ち着く。恋に落ちたほうが負け。本当にそうだとしかと思う。
うちのアパートから大学までは歩いて十分も掛からない。諏訪が買って来てうちに置いてある食パンを直火で炙り、食した後に家を出た。梅雨が終わり、朝早くからも日差しが強くなってきた。これからもっと暑くなって行くのだろう。今年の夏の電気代は凄いことになりそうだ。考えていることはあまり気分の上がる内容ではないのに心のどこかで楽しみにしている自分がいた。
二コマ目が終わる頃に諏訪からメールが届いた。
『授業終わった?』
シンプルな顔の絵文字付きである。諏訪のメールにはとりあえずこの顔がある。
『もう終わる』
『じゃあ学食にいく』
もちろんこの返信も同じ顔の絵文字付きだ。うちの大学には学部ごとに学生食堂があるのだが諏訪はわざわざうちの学部の食堂にまで足を運ぶ。大学内では自転車での移動ができるので、そう難のあることではない。けれど面倒ではないのだろうかといつも思う。
授業は五分ほど早く終わった。諏訪のもとへと向かうべく、早々に立ち上がる。丁度そのとき、机の上に置いていた携帯電話が震えた。どうせ諏訪だろうと思いつつも開いてみると、画面には予想もしていない人物の名前が表示されていた。
最初のコメントを投稿しよう!