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「ブブー、残念。男でしたー」
「なーんだ。男二人?」
「いえーす」
わざと大きく頷いて見せると嘉代は両手をパチンと合わせて笑顔を見せた。
「じゃあうちも行っていい?」
「んー?」
まさかの提案だ。正直ちょっと、邪魔かもしれない、とは言えないよな。無意識に川勝の顔を思い浮かべる。
「でもあいつあんまり喋らないよ?初対面の人が相手だと特に」
「...迷惑かな?」
そう言われると大抵の男は、少なくとも俺は、「迷惑ではないと思うけど」と、答えるしかない。そして笑顔になる嘉代を見て、やってしまったと川勝のしかめっ面が浮かんだ。
川勝はあまり女が得意ではない。前に本人に確認したら、「別に」とはぐらかされてしまったのだが、俺との付き合いの中でそれは顕著だ。まず合コンには行かない。女と話しているのを見たのは指で数えられるほど。女の話をすると口数が減る。もともとがお喋りな性格ではないからなんとなく分かる気もするのだが、川勝は美少年という言葉が似合う綺麗な顔をしている上に口調こそ素っ気ないが知れば知るほど優しい。故に本来、女からの人気は高いはずなのだ。
とはいえ俺の意見を押し付けるつもりは毛頭ない。なにより今のままの川勝が川勝らしくて俺は好きだ。だからこそ今から嘉代を連れていくのは申し訳ないし、俺自身が邪魔だと思う。川勝はただの隣人や友人ではない。俺はそう思っている。
案の定、学食の入口の前でちょうど川勝と会ったとき俺は後悔した。一瞬だけ、川勝と目が合って以降こちらを見ない。いや、見てはいるが、意思を感じないというか、上辺だけで冷たい。
「あの、良かったら一緒にお昼いいですか?」
俺が嘉代を軽く紹介した後、嘉代が腰を低くして聞いたときにはこちらに視線すらやらなかった。
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