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くうくうと穏やかな寝息を立て、ベビーブルーのベッドで丸まる少女がいた。
その少女に忍び寄る影―――それが、バッと飛び掛かった。
「ぅぐっ」
「あちゃらよ! ねーちゃ!」
きゃらきゃらと笑い声を上げ自分の上に乗りパタパタはしゃぐ襲撃者に、少女―――神埼(かんざき)瑞姫(みずき)は眉根を寄せ瞼を押し上げた。
片目だけで首を少し持ち上げのし掛かる襲撃者―――幼子を捉えた。
「んう……紗姫(さき)ぃ……」
「おあよ! ねーちゃ!」
まだ三歳の妹、紗姫は、顔を顰める姉を意に介さずニコニコと可愛らしく笑いながら挨拶をした。
それに、瑞姫は諦めたように脱力し妹の、自分と同じ柔らかい髪質の黒髪を撫でた。
「……おはよう、紗姫。朝から元気だね…」
「んっ! きょーは、さき、ゆうちゃとあしょうの!」
「ああ、ユウちゃんね……」
欠伸混じりに返す姉に、紗姫はぷくっとまろやかなピンク色に染まった頬を膨らませた。見えないが、怒っているようだ。見えないが。
ユウちゃんとは、紗姫が通う保育園で仲の良いお友達だ。偶に遊びに来ては、その天使のような笑顔で瑞姫も二人の母も虜にする愛らしい子である。
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