霊探部

3/9
前へ
/12ページ
次へ
 保育園に行く日は毎回遊んでいるだろうに、毎回早起きしてこうしてお越しに来る紗姫。可愛いが、取り敢えずボディプレスは止めて欲しい瑞姫だった。  もそもそと起き上がり、ボサボサの頭を掻いて紗姫を抱き上げ、階下に行った。紗姫はリビングの前で下ろし、自分は洗面所に行く。  ヘアバンドを着け口を濯ぎ顔を洗えば、ボーッとしていた瑞姫とて少しは目が覚めた。  開けっ放しのリビングのドアを潜り、両親に欠伸をしながら挨拶。 「おはよお」 「おはよう、瑞姫」 「おはよう。偶には紗姫より先に起きなさいよね。あ、今お母さん上手い事言った」 「上手くねえよ」  突っ込めば、女の子がそんな口利かないの! とぷりぷり怒る母をスルーし、新聞を読む父の前、紗姫の隣に腰掛ける。 「瑞姫、昨日どうだったんだ?」  穏やかで地味な顔立ちの父、晴紀(はるき)は銀縁のスクエア眼鏡の奥の目に柔和な光を湛え、見た目通り穏やかな声で訊ねた。  瑞姫は、んー、と唸り、一旦キッチンに行き作り置きの麦茶とコップを持ってきてから、ただ一言、 「無事、成仏したよ」  とだけ言ってコップに注いだ麦茶を飲み干した。  それだけで理解した晴紀は、ホッと安堵の息を吐き笑みを浮かべた。 「――そうか。無理だけは、するなよ」  毎回告げられるそれに、瑞姫はコクンと頷くだけで返す。それは、重々承知している。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加