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保育園に行く日は毎回遊んでいるだろうに、毎回早起きしてこうしてお越しに来る紗姫。可愛いが、取り敢えずボディプレスは止めて欲しい瑞姫だった。
もそもそと起き上がり、ボサボサの頭を掻いて紗姫を抱き上げ、階下に行った。紗姫はリビングの前で下ろし、自分は洗面所に行く。
ヘアバンドを着け口を濯ぎ顔を洗えば、ボーッとしていた瑞姫とて少しは目が覚めた。
開けっ放しのリビングのドアを潜り、両親に欠伸をしながら挨拶。
「おはよお」
「おはよう、瑞姫」
「おはよう。偶には紗姫より先に起きなさいよね。あ、今お母さん上手い事言った」
「上手くねえよ」
突っ込めば、女の子がそんな口利かないの! とぷりぷり怒る母をスルーし、新聞を読む父の前、紗姫の隣に腰掛ける。
「瑞姫、昨日どうだったんだ?」
穏やかで地味な顔立ちの父、晴紀(はるき)は銀縁のスクエア眼鏡の奥の目に柔和な光を湛え、見た目通り穏やかな声で訊ねた。
瑞姫は、んー、と唸り、一旦キッチンに行き作り置きの麦茶とコップを持ってきてから、ただ一言、
「無事、成仏したよ」
とだけ言ってコップに注いだ麦茶を飲み干した。
それだけで理解した晴紀は、ホッと安堵の息を吐き笑みを浮かべた。
「――そうか。無理だけは、するなよ」
毎回告げられるそれに、瑞姫はコクンと頷くだけで返す。それは、重々承知している。
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