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「…そもそも思ったんですけど、夏名先輩、よく文芸部に入りましたね」
彼女はあまり本を読まない。
雑誌すらもあまり購読することはないようで、活字と言えば朝、新聞を読む程度だそう。
前から不思議だったけれど、そんな夏名先輩がどうして本を中心とした文芸部に所属しているのだろうか。
「え?ああ、好きな人が文芸部だったから」
「単純ね」
くすりと笑う冬乃の反応と同じくして、僕は唖然としていた。
まさかそんな理由で文芸部にいたとは。
僕が入った頃は僕と彼女だけだったことを踏まえて考えると、夏名先輩の先輩なのだろうか。
「うーん、好きとはいっても、そういうのじゃなくて…。憧れ?とか、そういうのかな」
ああ、なるほど、そういうことか。
恋愛沙汰に興味の薄いらしい夏名先輩のことだから、まさかとは思ったけれど、案の定、その手のことだった。
「どういう人だったんですか?」
「気になるのかしら?」
横から冬乃が茶々を入れてくるけれど無視をして、夏名先輩に訊ねた。
「何て言うか、光のなかにいる人だった。常に誰かに頼られていて、誰からも愛されるような、そんな人」
「詩的な表現ね」
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