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「あと一人、欲しいところよね」
「そうですね。三人だと、夏名先輩が卒業してからまた同じことを悩まないといけませんし」
ああ、そっちか。
わたし的には男女の比率を半々にしておこうと思って、男の子を一人、入部させておきたいと思っていたのだけれど。
「男で文化系、それも文芸部は難しいですよ。僕みたいに詐欺にあったならまだしも」
それは申し訳ないけれど、詐欺まがいに関しては孝平くんだからそうしたのだと。
言いたいけれど、まるで愛の告白のようで恥ずかしいから、言えるわけもなかった。
「そうだね。男の子で文化系、それも文芸部に入るなら図書委員に入る方が内申的にも良いって聞くしね」
「それも友達に聞いておきましょうか?」
鞄からクッキー(お姉さんお手製らしい)の入った袋を取り出しながら、そういう孝平くんにわたしは驚いた。
「孝平くん、友達いたの?」
失礼な驚き方だった。
「失礼な」
結構恐い顔で睨まれた。
せっかくのかわいい顔も怒ってしまえばやはり男の子だ、女のわたしには畏怖の対象になる。
「夏名先輩程ではないですけど、それなりにいますよ。休みの日なんかにも遊びますし」
「わたしはそんなに友達多くないよ?」
「休みの日は誰かと必ず遊びにいく人がですか?」
ふむ、たしかにそう考えると友達は多い方かもしれない。
「休みの日で思い出したけど、孝平くん、朝っての日曜日は…暇?」
「え?…えーと、あ、はい。暇ですね」
携帯電話のスケジュール帳を確認すると、返事をしてくれた。
彼は彼で家の手伝いだとかで暇がないことも多いらしく、日曜日なんかはお姉さんの頼み事を聞いてたりするようで、結構予定がつまっているそうだ。
「嫌じゃなかったら、君のおうちに遊びにいってもいい?」
「は?」
何言ってんだこの人。みたいな顔で返された。
いやまあ、急に異性から家に行ってもいいかと言われたらそんな反応もするだろう。
これで照れたりするんならまだ可愛いものだけれど、一年の付き合いでそんなことで照れるような子ではないのはわかっている。
「別にいいですけど、冬乃がいますよ?」
冬乃…ああ、お姉さんのことか。
二つ上の姉にたいして呼び捨てとは、なかなかどうして小生意気に感じるけれど、そこはそれ、姉弟仲はいいのだろう。
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