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「話には聞いてたけれど、ずいぶんときれいな子ね。彼女?」
飲んでいたお茶を吹きそうになった。
それを必死にこらえ、カップをテーブルにおいてため息をつく。
「違う。部活の先輩だよ」
「そう。さっきもしたけど、改めて。私は月島冬乃。この子の姉よ。よろしくね」
「わたしは林夏名です。文芸部の部長で、孝平くんにはいつもお世話になってます」
珍しく柔らかい表情の冬乃と、にこにこしっぱなしの夏名先輩。
どうにもこの二人は気が合うということを理解するのに時間はかからなかった。
「で、夏名先輩。今日は何をするんですか?」
「んー、一応、部活動の延長ということで……あ、あった。文集についての案をまとめようかなって。ほら、やっぱり新入部員はほしいじゃない?」
僕が預かった鞄とは別に持っていた紙袋から取り出したのは、原稿用紙やペン、その他メモ帳や筆記具のカタログ。
珍しい、夏名先輩がこんなにもやる気になってるなんて。
明日は槍の雨の中、学校にいかなくてはならないかもしれない。
「孝平くん、今失礼なこと考えてた?」
「いや、そんな」
なんでそんなに鋭いのだろうか。
まあ、それは今はおいておいて。
「まず、何を題材にして書くか決めておかないといけないね」
それだ。
部活動の紹介に出す文集とはいっても、本には違いない。
短編が二部になるけれど、台がなければ内容もないに等しいから、それを今のうちに決めておくに越したことはない。
どのみち、明日から執筆期間に入るわけだから。
「やっぱりこう、手に取ってもらうために新入生の好奇心をくすぐるテーマがいいのよね。でも、わたしはそういうのに疎いから…」
苦笑しながら取り出した携帯電話でなにかいい案がわかないかネットで情報を集めながら、夏名先輩は唸る。
しかし、それを言うなら僕だってそれほど本に精通しているわけでもないし、何より、詐欺にあって入部した僕は文集を読んだりはしていないから、いまいちぱっとしない。
「あら。結構真面目に活動しているのね。孝平の話では結構遊んでいるように思ってたけど?」
八割方遊んでると思って間違いないと思う。
こういうときにくらい真面目に活動しておかないと、それこそ活動実績がないからと廃部通告をされそうで恐い。
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