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「失礼しまーす」
「いらっしゃい。愛坂さん」
まさにこれこそ眼福。
藤咲先生もかっこいいと思うけど、あたしはやっぱり先生のほうが好き。
「今日はいつもより来るの遅かったですね」
「ヒメ…ってわかりませんよね。井上と話してたんです」
「あぁ。井上さんですか」
ヒメの話題を出すと先生がクスクスと笑い出す。
「なんで笑うんですか?」
「いや、井上さんって古典が得意じゃないんですよね?」
「…はい。でも、なんで先生が知ってるんですか?」
先生はとても優しい笑みを浮かべてあたしの質問に答える。
「藤咲先生に聞かされまして。自分が教えてるのになんで井上は…。絶対得意にさせてやる!…ってね」
「藤咲先生と仲いいんですね。なんか、意外です」
「高校からの付き合いなので。腐れ縁ってやつですよ」
ううん。そんなんじゃない。
腐れ縁なんかじゃなくて、きっと、先生と藤咲先生は仲がいいんだ。
それも、多分親友ってレベルで。
だって…。
先生が笑ってるから。
いつも、いつも笑ってるけど、それとは違ってなんかもっと…。
説明はうまくできないけど全然違う。
「いいな…」
口から思わず出てしまったその言葉はあまりにも小さくて、先生には届かなかった。
いつか先生のその笑顔があたしに向けられるときが来ればいいのに。
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