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藤咲先生が教室に入ってきて、HRが始まる。 夏休み前最後の。 この学校は2学期制なので、通知表は返ってこないが、期末試験の順位などの結果が返ってくる。 あたしは出席番号が1番だから、もちろん最初に。 「それじゃ、返すぞ」 先生のその一言でクラスがざわつく。うわーとか、こわいーとか、やだー、とか。 「愛坂取りに来い」 「はーい」 教室から出ていった先生を追い、廊下に出る。 他の教室の前でも同じ様に担任と生徒が1人づつ。 成績表を渡されて、言われた一言。 「まぁ、特になしだな」 「相変わらず雑ですね」 藤咲先生はあたしのその躊躇ない言葉に、はは、と笑った。 「成績優秀、生活態度にも問題なし。まぁ、掃除はよくサボってるが。そこは直せよー」 「はーい。以後気をつけます」 そんなこと、思ってないけどね。 受け取って素早く教室に入ろうとしたとき、藤咲先生が、あ、と声を出す。 「愛坂、お前進路どうするんだ。このあいだの進路調査の紙、白紙で出しただろ」 それは、あたしが聞かれたくなかったことで。 だから、早く教室に入ろうとしてたのに。 進路?そんなの決まってるわけがない。やりたいことなんて微塵もないし。趣味も特技も好きなこともない。 ただ、今楽しいことを一生懸命をやっていたいだけ。 でもそんなこといえない。そんなこといったら、家に電話かかってくるかもだし。そうしたら、あの母親のことだ。何をいいだすかわからない。    だから、あたしは嘘をつく。 「まだ決まってないんです。夏休み中には決めますよ」 そういって会話を終わらせた。
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