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その言葉であたしは少しづつ少しづつ顔を上げる。
その間も、あたしの心はうるさいぐらい高鳴っていて。
途中で顔を上げるのを止めて、目だけを動かす。
あたしの視界には優しく、とろけてしまうぐらい甘い顔で笑う先生がいた。
「な…ん、で」
「ん?」
そんな、笑顔を向けるんですか。
そう、言葉を紡ぎたかったけど、余裕がなくてできなかった。
だめだ、いまのあたしは自分でも何を口走ってしまうか、何をしてしまうか、わからない。
あたしはバッ!と席から立ち上がる。
「あ、あ、あの!今日はも、もう帰らないといけないので!か、帰ります!!」
「そうなんですか。残念です」
先生が本当に残念そうな顔をするから、あたしは不謹慎だけど、嬉しくってキュンとしてしまった。
そして慌てて帰ろうとして、ドアに近づくあたしの腕を先生が引っ張った。
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