16話**暑い夏

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あの日、図書館で告白した日から、俺と向坂は待ち合わせをして帰っている。 待ち合わせ場所は、野球部のグラウンドが見えるベンチ。 「…お待たせ」 荷物を担いで、慌てて駆け寄った俺にクスリと微笑む向坂。 「そんなに慌てなくても平気だよ…」 「いや、でも…さ」 はにかみながら隣を歩く。 こんな風になれるなんて、奇跡だ。 --------------------------- ----------------- ---------- 「向坂 俺、君が好きだ…」 「えっ…」 顔を赤らめながら、向坂は信じられないと言う目で俺を見つめていた。 「…沢村いちか、さんは?」 「ええ!!!」 びっくりして、大きい声を出す。 「やっぱり…」 そういって、むくれ顔になった向坂が可愛くて、笑ってしまう。 「…はは いや、昔、好きだったんだ」 「へえー…」 「本当だよ… 渡瀬の彼女だしね ましては、沢村を忘れさせてくれたのは、向坂だよ」 自分の名前が出てきたのは不意打ちだったのか、顔を赤らめた。 「…ふうん」 「向坂は?」 「え?」 「俺のこと、どう思ってるか聞かせて…」 本当は、顔に書いてある。 でも、言葉を聞きたくて、甘い声で囁いた。 「…!!」 顔を背けて、逃れようとする向坂を思わず抱き締めた。 熱が、伝わってくる。 「…はっ…離して」 動揺した向坂の声が聞こえてくる。 「じゃあ、言って」 ドクン ドクン どうしても聞きたい。 幸せにしてくれる魔法の言葉を。
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