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あの日、図書館で告白した日から、俺と向坂は待ち合わせをして帰っている。
待ち合わせ場所は、野球部のグラウンドが見えるベンチ。
「…お待たせ」
荷物を担いで、慌てて駆け寄った俺にクスリと微笑む向坂。
「そんなに慌てなくても平気だよ…」
「いや、でも…さ」
はにかみながら隣を歩く。
こんな風になれるなんて、奇跡だ。
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「向坂
俺、君が好きだ…」
「えっ…」
顔を赤らめながら、向坂は信じられないと言う目で俺を見つめていた。
「…沢村いちか、さんは?」
「ええ!!!」
びっくりして、大きい声を出す。
「やっぱり…」
そういって、むくれ顔になった向坂が可愛くて、笑ってしまう。
「…はは
いや、昔、好きだったんだ」
「へえー…」
「本当だよ…
渡瀬の彼女だしね
ましては、沢村を忘れさせてくれたのは、向坂だよ」
自分の名前が出てきたのは不意打ちだったのか、顔を赤らめた。
「…ふうん」
「向坂は?」
「え?」
「俺のこと、どう思ってるか聞かせて…」
本当は、顔に書いてある。
でも、言葉を聞きたくて、甘い声で囁いた。
「…!!」
顔を背けて、逃れようとする向坂を思わず抱き締めた。
熱が、伝わってくる。
「…はっ…離して」
動揺した向坂の声が聞こえてくる。
「じゃあ、言って」
ドクン
ドクン
どうしても聞きたい。
幸せにしてくれる魔法の言葉を。
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