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二人は向坂のマンションの前でたちどまった。
「結局ごめんなさい…」
「いーよ、はいこれ」
持っていた鞄を差し出すと、申し訳なさそうに受け取った。
外灯が二人を照らす。
「…ねぇ、毎日こんなに遅いの?」
アスファルトに映った影を気にしながら、剛は疑問を口に出していた。
「うーん、日によるかなぁ」
向坂の呑気な答えが帰ってきた。
「足痛そうだし、もっと早く帰りなよ
暗いのも危ないよ?」
「うん…
そーなんだけどねー」
なんだかまるで危機感のない向坂にイライラとした。
「…6時」
「え?」
「6時までには帰りなよ?
それがもし過ぎたら、野球部終わった俺と帰ろう?」
「だっ、大丈夫だよ」
向坂はわかってない。
自分がどれだけ危機感がないのか。こんなに道は暗いのに。
「なんだか、すごい心配なんだ…
約束!」
「…はい」
こうして、向坂まどかと奇妙な約束が成立した。
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