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「今日も家まで送ってもらっちゃって…ごめんね」
「ううん、じゃーな」
剛は後ろを振り返り、歩き出した。
(暑いなぁ…)
じんわりと汗が顔に滲む。
でも、こんな帰りかたも悪くない。遠回りも苦痛に感じない。
不思議だなぁ…と、物思いに更けながら歩いていた。
タッタッタ…
突然、足音が近づいてきて、振り替えれば息をきらした向坂の姿があった。
「篠崎くんっ」
驚いて振り返れば、向坂の手にはアイスキャンディが握られていた。
「向坂…?」
「これ、あげる」
アイスキャンディを差し出された。
「えっ」
「暑いから…」
はぁはぁと息をきらして、アイスキャンディを手に持っている向坂を見て、つい顔が緩む。
「ありがとう」
見ると、アイスキャンディは溶け出していた。
「本当に、暑いな…」
「わぁー!ごめんね!溶けてる」
慌てる向坂がおかしくて、また、口許が緩んだ。
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