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アタシは五藤みたいな寂しいオジサンと一晩一緒に過ごして、こうやってお金を貰っている。
でも、身体の関係はもたない。
ただ、一緒に寝るだけ。
これはたぶん、あまりいい事では無いのは分かってる。
「じゃあ、アタシ支度して行くね」
「また頼むよ~」
五藤の言葉を聞き流し、アタシは洗面所で顔を洗い、髪をひとつに束ねる。
鏡に映るのは、いつもより少し眠そうな自分の顔。
……そう言えば学生の頃、子犬みたいで可愛いって言われた事がある。
でもアタシはこの顔があまり好きではない。
なんて言ったら、お母さん泣いちゃうかな。
くっきりした二重に、人並みに筋の通った鼻。
ぷるん、って音が似合う唇。
プリクラ撮ると目が化け物みたいになる。
けど、この顔に何人も男が寄ってきて。
皆アタシみたいなのがタイプなんだ、なんて思ったり。
なんだかんだ着替えを済ませ、五藤の家を出る。
40歳後半にもなって、このお世辞にも綺麗とは言えないアパートで暮らすなんてどうなんだろう。
まぁでも、アタシにはそんな事関係ないや。
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