ルート1号 大逃走

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    「なっ?」 隣に並ぶ姿を見て驚くしかない。 人くらいの大きさの猫型ロボットの背中に、まるでロボアニメのように鋼鉄の翼が生えて立っていたのだ。 その体はジェット噴射でふわふわと浮いている。 まさかこいつと鬼ごっこをしろって言うんじゃないだろうな? 車同士のスピード比べなら負ける道理はないけど、相手がジェット機のようなロボットだとしたら、話は別だ。 車とジェット機、どっちが速いかなんて考えなくても解る。 ……いや、法律に基づいた裁判である以上は、一方的な負けを喫する事は有り得ないはず! 『それでは裁判を開始します。位置に付いてヨーイ……』 まるで運動会のような号令に、俺は迷わずハンドルを強く握った。 『ドン!』 ローギアから滑らかにトップギアまで切り替える。 あのネコ型ロボットがどういうつもりで国道なんて選んだか、容易に想像出来る。 深夜とは言え、高速道路とは違って国道は車の通りがかなり多い。場合によっては信号待ちや工事などで足止めを食らう可能性もある。 その中でのスピード比べ。つまり、この裁判は……。 『本裁判で被告に要求されるものは判断力。社会に有益な人材だと証明する事が出来れば、あなたは無罪となります』 カーナビの方のロボットが、俺の予想を代弁してくれる。 そう、確かにテレビでも裁判によって犯罪者の能力を考慮し、国に有益な人材は無罪にする、なんて言ってたっけ。 くくく、舐められたものだ。速さの壁を越える男が、まさか猪突猛進で驀進するだけの愚か者と思うなよ!    
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