ルート1号 大逃走

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    「なっ!?」 言っておくが、俺は三度の飯を忘れても、愛車のメンテは絶対に忘れない。 にも関わらず、スピードを落としてハンドルを切ろうとした瞬間、踏み込んだ右足に有り得ない軽さが襲ってきた。 ブレーキが利かないっ!? 『はーい、れでぃーすあんどじぇんとるめーん! ついに始まりました、異常刑法!』 「はあっ!?」 今まで機会音声然としていたナビ上のサバキ君の声が、突然馬鹿にしたような口調の女の声に変わった。 『え~っと、本日の犯罪者さんは? あら嫌だ、翔くんだなんてかっこいい名前っ。思わず惚れちゃいそうだわ!』 「な、なんだこれは! ブレーキが突然おかしくなったぞ!」 『そうよ、ただのレースゲームじゃ面白くないわよね? だからね、スピード狂の君には特別裁判♪ ハイスピード鬼ごっこじゃなく、ノンストップ鬼ごっこに急きょ、変更しま~す!』 訳が解らない。 裁判の内容が変わる? そんなのアリか! 『あ~、そうそう。心配しなくても、目的地に着いたらちゃんと無罪にしてあげるわ。でないと、折角のサバキ君の全国配置が無意味に終わっちゃうものねぇ、反対運動で』 「うわああああっ!」 ブレーキが利かないどころか、車はどんどんと加速していく。 目の前に迫る車を何とか追い越す、だがこれはまずい! 「お、おい! これって何だ! 有罪か無罪か判断するだけのゲームなんだろう!」 『うるさいわね。犯罪者に人権なんてないのよ、ボケ』 まるで人のように、その猫の表情を歪める、カーナビの映像。    
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