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「朱菜。
幼なじみだからってね、許していい事と悪い事があるのよ」
朱菜を諭すように珠緒は言う。
「(咄嗟にとった行動とは言え、何かまずった気がする……)」
抱き合う菜唯人の背中から汗が滲みだす。
「アンタ、いい加減離れなさいよ」
ぐいっ
珠緒は菜唯人と漣を力任せに引き離そうとする。
「離さねぇよ」
珠緒の力に負けないように菜唯人は踏ん張る。
そして漣は苦しそうにしている。
「往生際が悪いわよ!」
ぐいいっ
珠緒は渾身の力を込めた。
パサッ……
珠緒の力の反動で漣のウィッグが床に落ちた。
「あ……」
朱菜は思わずそれを凝視した。
「……ヅラ?
その髪型、まさか……」
剥き出しになった漣のヘアスタイルを見て珠緒は咄嗟に漣だと把握した。
「ばれたか」
観念した菜唯人は漣を離した。
「ごめん、珠緒」
珠緒の方を向き漣は謝った。
「漣が……漣が……わーん!」
漣の格好を見てショックを受けた珠緒は泣きながら走り去った。
「珠緒ぉ~!」
珠緒にさられ漣は叫んだ。
……が、声は届かなかった。
「完璧に誤解されたわね」
朱菜は走り去った珠緒を見てため息をついた。
「一応頑張ったんだがな」
額の汗を拭いながら菜唯人は言う。
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