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「おーい。悟っ!」
俺の名は榊悟。
今年高校に上がったばかりの高校一年生。
中学卒業と共に上京し一人暮らしを始めたごく普通の高校生だ。
「おい!悟?聞こえてんだろ!
返事しろよ。」
このツンツン頭の騒がしい男は俺の腐れ縁。
名を省吾と言う。
こいつとは小学校~中学校とずーっと同じクラスで等々高校まで一緒になってしまったと言うある意味ストーカーみたいなやつだ。
だが入った理由はストーカー行為目的ではない。
親に「そんなにオカルトが好きなら高校はじいさんの家の近くにしなさい」と言われ、一番近いこの学校に決めた所、たまたま被ったと言うのが事実である。
「あぁ…聞こえてんよ!」
「相変わらずつれねーな…
それよりよ!じいさんの部屋でなんと!
こんなもん見つけたんだ。」
省吾は鞄から表紙に五芒星が書かれた緑色の本を取り出した。
「これは…」
「そう!グリムワルド!魔導書だ!」
嫌な予感がする。
省吾は昔からオカルト好きで毎回実験に付き合わされていた。
それにそれらしい成果が出たことはない。
美味しい料理が完成してしまった事はあるが…
「これによると魔方陣を描き呪文を唱えると悪魔が召喚できるらしい!」
はぁ…
毎度の事とはいえ、 悟はあきれ果てていた。
絶対成功するはずもない事に時間をかけ、最終的に片付けが大変とくれば誰がやりたがるのであろうか…
「パス。」
悟は誘われる間もなく先に断って見せる。
「ちょ!?誘う前から!」
「はぁ~。お前がそう言うときは必ず誘いだろう?
悪いがパスだ。
何も起こらんことに労力は使えん。」
「ちょ!?今度は起こるかも知れないじゃないか!」
「ありえん。万が一にもな。」
「そんな…夢も希望も無いことを…」
「パスったらパスだ!」
「頼む!」
「くどい!!」
悟はバンと机を叩くと席を立ち上がり教室を後にする。
「あれ?悟さん。どちらへ?」
「便所だ!便所。」
「付き添うよ。」
「くるな!」
悟は廊下に出ると少し早歩きでトイレに向かうも省吾はぴったりとその後ろを着いていく。
「なぁ…頼むよ~。
お願い!」
「パス!駄目だ。」
「頼むよ。一生のお願い!」
「パス!つうかお前の一生のお願いは一生に何回ある!」
「そう言わずにさぁ~。」
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