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「なぁ…省吾?
これって…竹刀だよな?」
「あぁ、そうだよ?
中学の時に使っていたやつだ。」
やっぱり竹刀!?
やる気あんの!?
いくら失敗を願う悟でも呆れ返り空いた口が塞がらなかった。
いや…いくら失敗すると確定した術でももっと本格的にやる気はないのか!?
せめて聖剣エクスカリバーの模造刀くらい用意しようよ!!
心からそう思うも口には一切出ずただ目を丸くし佇む悟。
そうしている間に省吾が燭台に火をつけていく。
部屋が段々明るくなり省吾の姿が徐々に見え始めた。
「!?」
明かりに写し出された省吾の姿に悟は絶句する。
何故なら黒いマントに顔全体を覆い尽くす黒い三角マスクとまるで何処かの宗教団体のようなその格好であったからだ。
そして抑えられない程の疑念が悟を襲う。
それは何故これだけ凝っているのに召喚用の武器だけただの竹刀な訳がない!
「なぁ!!
ここまで凝っているのに何故武器だけ竹刀なんだ?
まさかこの竹刀曰く付きとか!?」
もしかしたらこの竹刀は名刀なのか!?
かの有名な竹刀の開発者が作ったものとか…
中学の時使っていたのは偽装とか…
そう言えば中学の時あいつ必ず初太刀でやられてたよな!
まさかこの竹刀をかばって…
もはや悟の興味はこの竹刀に注がれていた。
どんな曰くがあるのか!
それが気になって仕方ない。
悟が目をキラキラさせ省吾に聞くと省吾は悟の方を振り向きため息をつきながら言った。
「ふぅ…普通の竹刀だが…
通販で売ってた安物だよ。
武器は何でもいいらしいし。」
その言葉に悟の瞳から光が消えると同時に崩れ去る様にその場に座り込む。
まぢかよ…
俺…馬鹿みたいだ… こんな竹刀に期待しちまって…
がっかりだ…
でも失敗は確実か。
それだけが悟にとって唯一の救いであった。
こんながっかりを省吾と出会ってから何回したか解らない…
最初は魔方陣だったかな…
古代の魔方陣と言われてその気になったあげく、実はテレビショッピングで二枚ついてお得なただのマットだったっけ…
これも省吾の実験に付き合うのが嫌な理由の一つである。
こんな悔しい思いはしたくないと思いつつも毎回騙される自分に腹がたつ。
悟の体から負のオーラが吹き出し、その場を更に暗く染めだしていた。
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