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「本当ユウイって、その話しかしないよね」
「えっ?」
食堂で、他の女性訓練生と話していた私――ユウイ・メシアズは、呆れが混ざったため息とその言葉に動揺した。
「そんなつもりじゃないんだけど……なんかごめん」
苦笑いを洩らしながら、相手の様子を窺う。同期の訓練生である柳(やなぎ)さんは長い蒼い髪をくるくると指で遊ばせながら言葉を続けた。
「しかも信じらんないのが、その隊員の顔と名前も覚えてないってどういうことよー。何支部配属とかすら知らないの?」
ああ、それなら。と私は彼女に嬉の感情をぶつけるように、満面の笑顔になる。
「多分ここだよ、本部。だって、私の学園は本部の近くにあったもの」
ふーん、と既に柳さんは私に興味をなくしていたようだった。私はといえば、女の子って難しいんだなぁ思いながらも笑うことしかできない。
柳さんには、昔鬼狩隊員に助けられたことがあるが顔と名前を聞き忘れた程度の認識しかないのだから、そう反応されるのも当たり前だ。
顔と名前も覚える暇も余裕もなかったため、思い出せるのはあの温もりと、優しい言葉だけだった。
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