第零章

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「実はね、櫻庭の奴毎日君用に特訓プログラムを徹夜で考えてたんだよ」 「ユキ!」  櫻庭教官は彼を制止させるために怒鳴ったが、ユキ教官はさらりと全文言ってのけた。  これまでの訓練を思い返してみる。まさか自分だけ少し違った訓練をしていたのか。どうやら必死で気づかなかったらしい。 「普通気づくよなぁ」と、稲葉副教官もにやにやと笑っている。  思い返してみれば、櫻庭教官は確かに厳しいが理不尽に怒鳴ったりされたことは一度としてなかった。 「櫻庭教官、二年間お世話になりました」  私は教官に向かい敬礼する。彼は私の目を見つめてから「これからは実践だ、死ぬなよ」と言い、食器を片づけるために席を立とうとして、「ユキ、ついでに片づける」と彼の分も食器を持って行った。  どうやら優しいところもあるらしい。
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