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『私のお姉ちゃんのフィリスお姉ちゃんは私にとって大事なお姉ちゃんです。私なんかと違って護身術もすごくできるし、お勉強もとってもできて、頭がいいです。お姉ちゃんは、ユウイの自慢のお姉ちゃんです。もしお姉ちゃんが困っていたら』
『ユウイが助けてあげたいです』
そう拙い文字で書かれた作文は、赤い染みに染まっていた。
私は目の前で起こったことが理解できないでいる。白いフードの男が、音も立てずに目の前に降り立つ。彼の右腕には、私がよく知っている人間が目を見開いたまま引っかかっていた。
「君で、最後かな」
抑揚のない、冷たい声が降りかかる。男は一歩一歩私に近づいて。私も一歩一歩それに併せて後ずさりした。
いつもの登校途中のはずだった。いつもの、学園に入る校門には亡骸が落ちている。仲がよかったクラスメート。担任の先生。少し厳しい学園長。皆、動かない。
「あ……」
気がつけば、背後は川になっていた。私は怯えてしまい、足が途端に動かなくなる。
男はそれすらも楽しんでいるかのように、うっすらとした笑みを見せた。
私は、提出する前に一度姉に見せようとした作文を握りしめる。
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