第零章

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 鬼狩には本部、西国支部、東国支部が存在する。中でも本部はエリート集団と呼ばれており、訓練の内容も西国支部や東国支部とは違うらしい。まあ、この話はあくまで噂程度だが。  鬼狩は本部に四つ、西国に三つ、東国に五つの小隊を持つ、戦闘組織としては小規模な組織だ。一つの小隊に約二十五人が種族、年齢、性別問わず所属している。  西国にはエルフと呼ばれる魔法を得意とする種族が住んでおり、東国には鬼と呼ばれる戦闘を得意とする種族が住んでいる。  どちらも人間に近い容姿をしているが、エルフは人間より長い耳を持ち、鬼は強い力と長い爪を持つ種族だ。  隊長格の話に花を咲かせていると、柳さんが溜め息をつきながら愚痴を話し始めた。 「あの鬼教官、種族も鬼なら性格も鬼なのよねえ、体もいつも全身に包帯巻いてるしさあ。まあ実力はあるんだけどさ」  柳さんの話し方で、誰の話をしているのかはだいたい検討はつく。  第三小隊隊長の櫻庭 大和(さくらば やまと)隊長だ。彼とは訓練生となった二年前から何かと縁がある。  私にとっては訓練時の教官であり、その厳しさは鬼狩本部一と訓練生達の間で噂されるほどであった。  すると、先程まで愚痴をこぼしていた柳さんが急にそそくさと食器を片付けに移動し始めた。 「え、柳さんどうし……」  言いかけて、背中に走った悪寒にゆっくりと背後に顔を向ける。 「悪かったな、性格も鬼で」  怒りに震えるそんな声が聞こえてきたのは、そのすぐ後だった。
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