序幕

14/14
前へ
/14ページ
次へ
「なにぼーっとしてんの、ほら、行くよ!!」 俺がそんなことを考えてるうちに紗弥音は目の前に来ていた。 「あ、あぁ、わかった」 「……ふふーん……さては、変なことでも考えてた?」 まるで脳内を見透かされていたような……こいつはそんなタイミングでこのセリフを吐く。 「え、いや、そんなことは……」 しどろもどろにならざるをえない。 紗弥音がじーっと俺の目を捉えている。 正直に言え、というような眼差しで。 ……言えるもんか!! 「……ほら、行くぞ、部活!!」 紗弥音から逃げるように鞄を持って早歩きで廊下へ向かう。 「あ、ちょ、逃げるな!!」 逃げてねーよ。 彼女に背を向けたまま口にする。 足音で紗弥音が慌てて後ろに着いてきてるのが分かる。 『可愛くなったな、って思ってた』 なんて言えるわけねーよな。 目を合わせたらバレてしまう。そんな気がした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加