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いまから約2ヶ月前、9月上旬。
3年生最後の舞台、校内で行われるコンサートが終わり次期部長、副部長を決める時の話だ。
紗弥音は当時の部長のお墨付きで部員全員一致で次期部長になることが決まった。
副部長はその「補佐」としての役割が大きく、次期部長の紗弥音様が指名した。
「私の補佐、ですよね?」
先輩の首肯を目にして即、名を挙げた。
「孝雅くんにお願いしたいです」
「……はぁ!?」
こういうのって普通、部内でそれなりに成績とか残してる人間がなるもんじゃ……。
そんな雰囲気がその場を包み込む。
「なんであいつなんだよ」
部内の連中がそんな話をヒソヒソとしているような気がした。
俺自身、そんな面倒な役回りはしたくない。
断らせてもらおう、そう思った途端。
「はい、桐生くんがやらないなら俺やります」
後ろの方から同級の男子が声を上げた。
途端、紗弥音が微妙にだが、顔をしかめる。注意深い人間でなければ気付かない程度の変化ではあるが……。
その男子の魂胆はなんとなくみえていた。
紗弥音は所謂美少女、憧れの的とでも言うべきか。何人もの男子が言い寄っていったが、ことごとく惨敗していったという。
俺のクラスメイトにもそういう奴がいた。
そういうのが何度もあり、嫌になって来る、そう愚痴っていたこともあった。
「いや、俺がやる。部長の指名通り、やらせてもらう」
空気読めよ、そう言わんばかりの雰囲気に一瞬たじろいてしまうが……。
それでも副部長をお前にさせるくらいなら……。
「部長の指名なんだから、いいんだろ?」
「コンクールメンバーに入ったことすらないやつが副部長?」
容易く引いてくれるわけがないよな。
「お近づき」になる大事な大事なチャンスなんだから。
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