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確かに、歌の下手な俺がコンクールメンバーなんかになれやしない。でも、その立場を紗弥音に言い寄るためだけに利用させるのは不快だ。
「だからなんだよ?」
指名されたのは俺なんだが。
そう言おうとした時、部長が口を開く。
「そのー、孝雅くんって、コンメンもなにもやってないじゃない? だからこそ、わたしの補佐をさせるんだけど」
事実なわけだが……釈然としねぇなぁ。
「孝雅くんにそういう仕事させるとよくやってくれると思うし。副部長というより、運動部で言うマネージャー?」
部員の女子達はなるほどねー、と相槌を打つ一方、それが気に食わないのは、さっきの男子生徒。
「でも! 俺ならこんな落ちこぼれより!」
この野郎……いい加減にしろよ!
「あ、あのなぁーー」
「じゃあ、山口くん。君は私の次にする行動を先読みして動ける?」
俺が反論を口にするより先に紗弥音が冷たく言い放った。
「そ、それは……」
「孝雅くんのことを何も知らない君がとやかく言っていいものじゃないよ。いまの言葉だって」
山口という男子生徒は悔しそうに唇を噛み締めた。
「じゃあ、みんな。孝雅くんによろしく頼もうと思うんだけど、いいね」
その問いかけにどこからともなく拍手が湧き上がった。
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