序幕

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「なるほどなぁ……」 優羽は納得したように大きく首を縦に振る。 「すげぇよな、その信頼関係」 「そうか?」 あぁ、という返事の後、深いため息をついてから続けた。 「我が家の妹は17年も一緒にいると言うのに信頼どころか、お兄ちゃんーとも呼んでくれん!!」 いやいやいや!! お前同い年の兄妹にお兄ちゃんはぁとって呼ばせたいのかよ!? ねーよ!!ありえねぇ!! 「第一だな!! 俺が兄だというのに美羽は姉だと言って聞きやしねぇ……」 人目も気にせずにここまで妹のことを大声で語る奴なんて初めてだ……。 「『お姉ちゃんって呼びなさい!!』ってうるさいんだぜ……」 どっちもどっちだわ!! もういいよお前ら兄妹!! 「優羽……!! アンタねぇ……」 いつの間にか、優羽の後ろに拳を高く振り上げた姉(自称)の美羽(ミウ)の姿が……。 ご愁傷様、優羽。 無慈悲な拳による制裁が優羽の頭頂部に振り下ろされた。 「いってぇぇ!?」 悲痛な叫び声が食堂に木霊する。 「こんなとこでなんてこと話してるわけ!? しかも大声で!!」 「え、いやぁ、ついつい話したくなったから?」 その言葉によってもう一度制裁が加えられる。 「ごめんね、桐生くん、うちのバカ弟が……ちゃんと躾とくから」 「あはは、気にしないで」 多分、今の俺の顔はひきつっているはずだ……なんかすげーデジャヴ感……。 まったく、紗弥音といい、美羽といい、最近の女子はなぜ人の頭をすぐ殴るのか。暴力的すぎるぞ……。
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