序幕

13/14
前へ
/14ページ
次へ
「おーわったー!!」 今日、最後の授業を終えて、んーっと背筋を伸ばして深呼吸。 ふぅ……今日も1日疲れたな。 「じゃあな、孝雅、部活行ってくら」 後ろの席の優羽がエナメルバッグを片手に俺の肩を叩く。 「あいよ」 こちらに背を向けて、左手をひらひらと振りながら教室を出て行った。 俺も行くか。 校章の入った布地の鞄に必要な教材とノートだけを詰め込んでいく。 「孝雅、いる?」 聞き慣れた声のする方に目をやる。 さっき優羽が出て行った教室の入り口に紗弥音が立っていた。 紗弥音も俺に気付いたようで目が合う。 すると、ニコッという愛らしい笑顔で手を振った。 高校生になって紗弥音と再会してから俺はつくづく思う。 紗弥音という昔から馴染みのあった女の子が、離れ離れになった数年間でこうも可愛くなったのだと。 かつては異性として見たこともなく、ただの遊び相手に過ぎなかったのに。今は立派な可愛い女の子になってしまっている。 だから、俺でもドキッとすることが……たまにはあるさ。 不本意だけどな。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加