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「親父、今日も遅くなるのか?」
すっかり頭が真っ白になった父親の背中に声をかける。
「んー、そうだな。今日もご飯先に食べて風呂に入っておいてくれ。あまり遅いようなら、先に寝ていいぞ」
「分かった」
親父はまだ若い。40代半ばだ。でも、俺の記憶にある頃にはすでに白髪が多かった。
俺に母親はいない。写真で見たことがある程度だ。
当然、その母親がいない、ということが親父に余計な負担をかけているはずだ。そのせいだろう。
「じゃあ、行ってくる」
「あぁ、親父、弁当は?」
「ちゃんと入れてるさ」
「そうか、よかった。いってらっしゃい」
親父は背を向けたまま片手を上げ、我が家を後にした。
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