序幕

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お盆を机に置き、先程まで紗弥音が使っていた席に優羽が座る。 「お前さぁ……」 「わ、分かってるって。わかっててもできないこととかあるだろ?」 「それはそうだけど……」 紗弥音がいなくなった途端、調子が戻ってきたみたいでいつもの饒舌に変貌する。 食事が少し進み、あと半分程度になった頃。 「ところで、孝雅。さっきの紗弥音さんのに戻るけど、最近、部活はどうなんだ?」 「あぁ……まぁ、それなりに、かな。俺は相変わらず歌は下手なまま」 文化祭のコンサートに出ることはできない。 「んー……まぁ、孝雅ってさ、中学の頃から音感なかったしなぁ」 「う、うるせぇ、ほっとけ」 人をからかいやがって……ケラケラと笑ってやがる。 残念だが、歌が下手なのは事実だ。中学時代に優羽と他2人でカラオケに一度だけ行ったことがある。まぁ……結果、この通り、音痴が露呈してしまった。 そんな俺がなぜ合唱部に入ったか。 それは他でもない紗弥音によって半強制的に入れられた。まぁ、少なからず歌が上手くならないもんか、あと、楽しそうだな、という希望を持って入ったこと否定はできない。 誰にも言わないけどな。 「前々から思ってたんだけど、なんで副部長になったんだよ?」 「あー……それは話すと少し長くなるかもなぁ……」 「時間はたっぷりあるんだぜ?」 ニヤッと口角を上げ、腕時計をトントンと指差した。 「はぁぁ……はいはい」
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