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「うん、椿はやっぱり美味しいね」
“やめてよ”
――その一言が、喉の奥に留まったまま出てこない。
「僕はね、こうやって人の血を吸う事が好きなのさ。
でも、人間の血を吸うなんてことはそう簡単に出来るものじゃない。
だから僕は血を吸うのを我慢する代わりに、毎日皆にキスをして、ほんのちょっとだけ味見させてもらってるんだ」
それが千堂くんの、皆にキスをする理由だってゆうの……?
有りえない、信じられない。
振り解きたいのに、千堂くんに見つめられてしまうと体中の血液が蕩けてしまったようになって、とても力が入らない。
「僕はキスをすると、その人間の血の匂いがよくわかる。僕が吸血鬼だからかなぁ?」
傷口を散々舐め回したかと思うと、彼は他の指にも舌を這わせてきた。
「人間の匂いを感じるだけで、僕は理性を保てる。
血を吸わなくても、なんとか我慢ができるようになるんだ」
この人は狂ってる。
そう思うのに、どうしてこんなにも惹かれてしまうの。
私には――…
瞬間、私は雪兄を思い出し、我に還って声を振り絞った。
「せん…どうく…ん」
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