第1章【危ない隣人】

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言いながら、千堂くんは手招きする。 とてもとても優しい微笑みだったものだから、私は考えもなしに彼のほうへ寄っていってしまったのだ。 「手当てに使うんじゃなくて、こう使うの」 千堂くんは、投げ縄の要領で包帯を投げてきた。 それは正しく、“投げ縄”だった……包帯の端には輪がつくってあったのだから。 いったいどこで見に付けた技なのか、投げた包帯は見事に私の頭をくぐり、彼が包帯の端をクイッと引くと、反応も出来ない素早さで輪は縮んで首へ巻き付いてきた。 「うっ……」 苦しい。 一体何を―― 「椿に指一本触れるなって、兄さんに言われたから。 これなら指一本も触れてないもんね」 千堂くんは満足気な笑みを洩らし、私の頬を舐めた。 「苦しい? その顔好きだなぁ……なんて、僕、変態かもね」 やっぱり千堂くんは狂ってるんだ。 なのに抵抗しない私も、十分危ない人間なのかもしれない。 「椿をこうやって縛り付けて、家に閉じ込めておきたいなぁ、、、なぁんてね」 千堂くんはそれだけ告げると、包帯を持っていた手を放し、窓の外へと消えていった。 どうしてだろう。 私の首は開放されたのに、いつまで経っても胸の息苦しさだけは消えなかった。
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