第1章【危ない隣人】

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彼は皆にキスをする。 ほら、今日も朝から 友達の頬に…… 「おっ前!朝からそれやめろって」 「朝じゃなきゃいいんだ?」 「そーゆう問題じゃねーだろっ」 男子生徒の怪訝な表情に、同じ学ラン姿の彼は悪戯な笑みを浮かべた。 ここからほどなく歩いた場所に、共学の高校がある。 だから私は朝になるといつも窓を開けて、学生たちの賑やかな様子を観察するのだ。 ――だって、気になって仕方ない。 彼が、どうして皆にキスをするのか。 確かにハーフのように端正な顔立ちをしてはいるけれど、日本人には違いなさそうだし 欧米特有のスキンシップと呼ぶには、少し違うような気がするのだ。 私がキス男……もとい 千堂(センドウ)くんを知ったのは、ちょうど1ヶ月ほど前に彼が隣の203号室に引っ越してきたから。 それから数日後の朝に、たまたま千堂くんのキス魔ぶりを目撃してから、無意識に彼の姿を目で追うようになっていた。 だけどこの事は、お兄ちゃんには決して言えない秘密。 だって…… 「椿(ツバキ)、今日も留守番宜しく」 「雪兄(ユキニイ)、行ってらっしゃいっ」 私のお兄ちゃんである雪(ユキ)は、私の唇に深いキスをして出掛けて行った。 これは私たち兄妹の日常。
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