154人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は皆にキスをする。
ほら、今日も朝から
友達の頬に……
「おっ前!朝からそれやめろって」
「朝じゃなきゃいいんだ?」
「そーゆう問題じゃねーだろっ」
男子生徒の怪訝な表情に、同じ学ラン姿の彼は悪戯な笑みを浮かべた。
ここからほどなく歩いた場所に、共学の高校がある。
だから私は朝になるといつも窓を開けて、学生たちの賑やかな様子を観察するのだ。
――だって、気になって仕方ない。
彼が、どうして皆にキスをするのか。
確かにハーフのように端正な顔立ちをしてはいるけれど、日本人には違いなさそうだし
欧米特有のスキンシップと呼ぶには、少し違うような気がするのだ。
私がキス男……もとい
千堂(センドウ)くんを知ったのは、ちょうど1ヶ月ほど前に彼が隣の203号室に引っ越してきたから。
それから数日後の朝に、たまたま千堂くんのキス魔ぶりを目撃してから、無意識に彼の姿を目で追うようになっていた。
だけどこの事は、お兄ちゃんには決して言えない秘密。
だって……
「椿(ツバキ)、今日も留守番宜しく」
「雪兄(ユキニイ)、行ってらっしゃいっ」
私のお兄ちゃんである雪(ユキ)は、私の唇に深いキスをして出掛けて行った。
これは私たち兄妹の日常。
最初のコメントを投稿しよう!