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「どうかした?」
つい物思いに耽っていた私の顔を、千堂くんは心配そうな様子で覗き込んでくる。
「なんでもないっ」
「本当に?
実は僕のキスを待ってたんでしょ?」
「違うってば!」
どうせ私にキスなんてしないくせに。
心からそう言ってやりたかった。
…――だって、それっきりなんだ。
千堂くんが私にキスをしたのは、あの日私が吐血したのを最後に、すっかりご無沙汰だった。
寂しいと思うのは気のせいなんかじゃない。
私は、千堂くんの事も好きだから。
雪兄のことを思うと、決して言葉にする事は出来ないけれど、こうやって私達3人の危ない関係は、不安定に続いている。
最低な私は、それを心地良くも感じていた。
それに千堂くんは、最近、皆にキスをする事が無い。
やっぱりあれは、ただのパフォーマンスだったってわけなんだ、きっと。
雪兄との関係も、千堂くんとの関係も
全ては自分に都合の良いように、絶妙なアンバランスを保っている。
この関係が、そう長く続くはずがない事は内心よくわかっていた。
――だって、長く続いてはいけない関係だから。
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