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考えを廻らせている私に、千堂くんは不意に投げかける。
「ところで、たまには雪さんの変態行為を拒んだら?」
「え、なんで?」
私は、間抜けな顔を向けるしか出来なかった。
「兄妹であんな関係なんて、普通考えられないよ?
ただでさえ僕は、おあずけ喰らってるって言うのにさ」
突然こちらに顔を寄せ、彼は私の短い髪を掴んで口元に当てる。
切れ長の瞳が、私を捉えて動けなくさせた。
「この匂いが僕を狂わせるんだ。
――わかる?」
その妖しげな笑みを見る度に、何故だか期待にも似た不思議な気持ちに陥ってしまう。
「兄さんと椿がキスしてるのを大人しく眺めてるのも、もう限界。
それでも、雪さんとの関係を続けていくの?」
そう言われても、私が雪兄を拒む理由なんて無い。
「だって――」
雪兄は私を好きでいてくれるし、私だって雪兄が好きなんだ。
私たち兄妹は、それが当たり前の関係なのだから。
……なのに、千堂くんの好意を優柔不断に受け入れてしまうのも事実。
それが良くない事も、頭では理解しているというのに。
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