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雪兄を拒む理由は無い。
とはいえ、千堂くんを拒みたくもない……
あれこれ応えを探しているうちに、千堂くんの表情が不機嫌なものへと変わっていく。
「そう。
じゃぁ、もういいよ」
……あれ?
やっぱり、怒らせちゃった?
一瞬だけ彼は、雪兄と私のキスを眺めている時のような、あの冷たい目線をこちらへ向けた。
そしていつもの“いってくるね”の抱擁も無しに、高校へ向かって行ってしまった。
結局、その日の午後を迎えても
私の胸の奥には、何となく重たいモノが疼いていた。
今朝の千堂くんの顔が忘れられない。
「私って、なんて優柔不断なんだろう」
自分に落胆し、うなだれる。
千堂くんに辛い思いをさせている事は解っていた。
彼から毎日のように“好き”と言われても、聞き流すことしか出来なかったんだ。
それは勿論、私には雪兄がいるから。
そして、千堂くんをどう思っているのか、自分自身でも曖昧だったから。
そりゃあ、千堂くんが怒ったのも当たり前。
私って、つくづく最低な女だ。
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