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反射的に聞き耳を立ててしまう自分を制御する余裕すらなく、やがて、千堂くんの部屋のドアが閉まる音を聞いてしまう。
それは彼女が、隣りの千堂くんの部屋へ入ったという証しだ。
もしかしたら、ウジウジしている私に呆れ果てて、あんな可愛い彼女を作っちゃったのかな?
でも、そもそも……
千堂くんに、彼女がいないなんて話、一言も聞いたことは無い。
彼はあんなに端整な顔立ちをしてるんだから、もしかしたら、元々あの子と付き合っていたのかもしれない。
すごく可愛いコだったし。
“嫉妬に燃える女”
今の私には、そんな言葉が似合ってしまうのかもしれない。
悔しい気持ちと悲しい気持ちとが混ざり合って、ズキズキと疼く様に胸が痛む。
冷たい壁の向こう側で、小さく響く物音。
耳を澄ますと、ここまで聞こえてしまうものかと、少し恐くもなった。
もう止めよう、こんな事。
改めて考え直した時、私はちょうど、その言葉を聞いてしまう。
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